キミの日記『Cherry's Diary』



「施設…」
 


考えてみればそうなのかも。

桃乃木には他に身内がいない。


「おう。だからさ、手伝え!」

 
「…は?」


「今からトラックが来るから荷物載せて欲しいんだ!」


「何で私?」


「だって、俺、あんまり友達いねぇもん」


それだけ?

今日呼ばれたのは

それだけが理由?

ダンボール箱を

運ぶったって10個くらいしかないんだよ。

気がつけば外にはトラックがやってきた。
 


「よし手伝え!」
 


桃乃木に言われたダンボールを一緒に運ぶ。

ひとつ、ひとつと

運ぶたびに

彼の家からみんなの思い出が逃げてゆく。

そんな気がした。



「あっ。」



粗方片付けた後、

ガムテープで止められてない箱を見つけた。


「美里?」


「え?う、うん。ゴメン。」
 


「それ、アルバムとかだから最後な。」
 


気がつけば、

桃乃木の家の中には何も残ってなくなった。
 
いつも勉強会してた机も

楓さんが料理の時に使ってた電子レンジも全部運んでた。



―ブルルルルブルルルル―
 


ポケットの中の携帯が振動している。

多分、お母さんからだ。

でも、今出る気がしない。
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