アズライト
虫の声と


遠くから聞こえる
バイクの走行音





薄暗い外灯


道路を渡ると
小さな雑貨屋がある

ここにはまだ公衆電話が
置かれていた




首を傾け受話器をはさむ


電話番号は一回で覚えた






プルル
プ


『  マキシム? 』




「 うん 」







『公衆電話って出たから
びっくりした

ハアハアしてるよ?
平気? 』


カチャ
小銭の落ちる音


「…東京の奴ってさ
平気?って言うよね
アスラも言う 」

『えー!
きにした事なかったよー』


「こっちは 大丈夫?っていう



てか
さっきゴメン

騒ぎ  驚いたろ 」




『なにが?
保留の音楽流れてて
しばらくしたら切れたよ 』



− ホッとした −




カチャ
小銭の落ちる音


『…なんかすごくない?
小銭の音 平気? 』


「ほら 平気?って言うベ」


『うわ ホントだ!あははは』

笑いがこぼれた


「アズさ 」


『うん 』

「名前なんていうの?」






『八兵衛 』


「うっかりは知ってるから…」



『…実はね…私 』

「うん」





『人間じゃないんだ アンヌ 』


「セブンかよ!!」


『違うよ ダンだよ
 駄目だなあ』


「クイズ禁止 」


『クイズきらい?』



「 ああ

昔 高校生クイズ出た事あるな」

『すご!!勝った?!』


「どこまでだったかな
国内で負けたかな 」


『やっぱり… 』


「やっぱりじゃねえよ
出るだけすごいべな 」


『出るだけだったら
私だって小さい時映画出たよ
おぼえてないけど 』

「自力以外認められないな 」


『なっ!』


− 小銭が半分まで減っていた−


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