アズライト
『…平気なの?』
「ああ
昨日は急に落ちて迷惑かけた
夜行った時、皆に謝るよ」
『そうじゃなくて
…それも心配だったけど
今電話して平気なの?』
「 ? なんで」
『…うん 』
「今何してた?」
『…テレビ見てたよ』
「全国花火大会特集か」
『え やってるの?』
− 紙の音
『…番組表にないや
こっちとやってるの
きっと違うんだね』
「そっちは何やってる」
『…タイタニックとか
仮装大賞の再放送
あとは
なんか俳優さんが魚つるやつ』
「タイタニック好き?」
『…お金かかってるなーって
思ってみてた』
「はは まあ、そうだけど
どこが感動した?
女ってああいうの好きだよな
デカプリオが沈むとこか?」
『ううん』
「どこよ」
『一目惚れって
したことないから
えー!って
こんな急に?!とか
途中まではびっくりしてた』
「泣いたシーンないの?」
『一番泣いたのは…
もう船が割れて
水がたくさん入って来て
皆必死で逃げてるのに
オーケストラの人達が
楽器ひいてたとこ』
「ああ あそこね
自分達が行かなければ
他の人達ボートに乗れるもんな」
『え 違うよ!
…あれは
もしかしたら
それもあったかもしれないけど
あの人達は
楽器を弾いてるのが最高に
幸福だったんだよ
音楽と一緒に沈むなら
それで……よかったんだよ』
「…それはもしかしたら
音楽やってる人しか
わからないかもしれないな」
『…Seroも』
「 ん?」
『Seroも 同じ所で泣いたって
言ってた 』
「そっか…
じゃあ 彼氏は?」
『 え 』