アズライト
レトロな昭和風の店内
蓄音機があり
壁のポスターは石原裕児郎や
眠り狂司郎
カウンターの奥の
黒電話を借りる
「…ダメだ 出ねえ 」
壁を叩いた
「まあ 普通出ないわよね」
わざとらしい、ニッコリ笑いで
ミチルは煙を吐いた
「− 帰るわ」
「ちょっとお!外 台風よ?!
電車も止まってるわよ
テレビ 見てみなさいよ!」
「歩いて帰る 」
「そこが駄目なの!!
1時間もすれば、雨足ゆるむし
そしたら車出すから!
もう少ししたら、米炊けるから
ご飯食べて落ち着いて!
淳が焦っても、台風は止まないし
ヘタに外出て、怪我してごらんよ
連絡するにも出来なくなるよ?」
「…それは…嫌だ…」
「でしょう?
落ち着いて、次にアズさんに
会った時
何ていうのか、きちんと考えてさ
いつでも少し、
離れて見てる感じの淳じゃ
なくなってるわよ
本当に、好きだからだと思うけど 」
「アズ今 何してんのかな…」
「怒って、やけ食いしてるかもしれないし
ま、ここが潮時かなって
彼氏の夕飯作ってるかもしれないし
それはわからないわね〜」
「………」
「でも
好きなんでしょう ?」
「………」
「今
心の中で思った事
きちんと言えばいいだけよ
そっちの大きい方の
ソファーに移動して
ご飯作って持って行くから」