アズライト
家の前

− 後部座席から降りて
運転席側の窓にまわる

ウィンドウが開いた


「どうもね」


「…昔ずいぶん悩み聞いてもらったからね
一個借りが返せたかな

あ あとこれ
食べないで寝ちゃったから」


コンビニの袋に
おにぎりが五つと、バナナ

それを受け取った




「久しぶりに
人の手作り食べた 」


「そりゃよかったわ
…なんかね 」


「うん」

「淳に、アズさんの話聞いてたら
勝手にイメージが浮かんで来て
ああ、こういう時、アズさんなら
どんな料理出すのかなあって
それでなんか、
ああいうメニューになったのね

ふふ
最初は冷凍ピラフ作ろうと思ってたのよ」



「…多分、イメージ合ってるよ

あいつさ
俺が運動会
ずっと先生と食ってたって言ったら
タイムマシーンに乗って
おいなり持ってく!とかさ
ふざけた事
かなり真剣に言ってた」



ミチルの目に
一気に涙が溜まった



「…なんか
満面の笑みと、すごい勢いで
大量のおいなり持って来る姿が
浮かんだ…
そしてコケるの…」


「あはははは」

「そして、体操着の淳に
馬鹿だなあ とか言われて
それでも二人で
仲良くおいなり食べるのよ…
うぅ…」


「ミチル、漫画家なれよ
読んでやるから」

笑いながら、袖でミチルの涙を拭いた



「…王子様復活だ…」


「なにが」


「…自覚無しなのね…
まあいいわ〜
また店に来てね〜
今度は割引券も忘れずに〜」





手を振った






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