アズライト
海
− 日が下りて来た
午後の海
海風に なびく髪を
緩く かきあげながら
アズは両手を 後ろ手に組む
… 潤んだ碧い瞳に
長いまつげが影を作り
静かに俺を見つめている
暫くの間 ただ
波の音が通り過ぎるだけで
…どうしていいのか
解らない
−何を言って良いか解らなくて
俺は馬鹿みたいに
ただ突っ立って
思い付く事から
呟いて行く−
「…スラストファーが
お父さんなのか…?」
「うん
…最後に
母に会ってくれたんだってね
自分の若い頃の話
黙って聞いてくれてた
不甲斐ない自分を殴ってくれた…って
お父さんに聞いた
ありがとう…」
− アズの声だ −
「何 で…
電話に…出さなかったのよ」
「…お父さんね
当時ずっとね…
『ネットで出会った奴なんて
信用ならん!
アズルはお母さんの人生を
これ以上トレースするつもりか!』って
電話でてくれなくて…
淳に…酷い事言ったら…
いやだったし…」
「………………」