アズライト
水彩画とロードショー
「オンラインゲームだよ」
さっきのちびっこキャラは膝を抱え
草原に広がる湖のほとりで
景色を眺めるかの様に座っている
弟は椅子の背を抱えたまま
ベットに座る俺に楽しそうに語り始めた
どちらかというと大人しい優が
嬉しそうにしているのは嫌ではないし
少しその話に付き合う事にする
「て事はあれか
あそこに一緒してたのは
誰かが動かして喋ってる奴らなんだな?」
「そうそう
俺はマジシャンで女キャラだったけど
1番デカイ男キャラいたでしょ
盾ってたモースン族わかる?」
「わかんねーって」
俺は笑いながら答える
「実は中身23歳の女の人なんだ
内緒だけどね
このゲームが開始した
同期組の奴らしか知らない」
…人が動かしてるし
それはおかしくないが23歳って…なあ
出掛けたり男とデートしたりが
1番楽しい時期じゃないのか
「ふーん
それより父っちゃと母っちゃはどこよ?」
「え、父っちゃは農協に多分行った
母っちゃは着物展かなんかの話で
出かけるっていってた
…淳くんも一緒にやらない?
俺回復出来るし
やるならきっと前衛だよね
俺サポートするからすぐLevel上がるし
一緒に出来る様になる」
「まくし立てるなや まあ、そのうちかな」
ムーっと椅子ごと画面に向く優
こういう顔は
小さい時から変わらんなあと思う
…確かに高校生の春と違って
勤めているアキと会うのは土日中心
変に幅を詰めてられるのを防ぐには
それ位の間隔がベストだし
子供の頃は二人で
格闘ゲームやったりしてたし
街の大会で優勝した事もある
何より「一緒にやろう」と
声をかけて来たのに心が揺らいだ
優が引きこもりになった原因は
多分、俺にもある
高校時代後半
手当たり次第ナンパしてたせいで
一部評判が最悪だったらしい
それで優へのイジメも酷くなったと思う
気が付いて問い詰めた頃には
もう学校にあまり行かなくなっていて
…でもADSL家に引くとか手続きが怠い
優が再びキャラを動かすと
向こうから誰か走って来た