りんねの歌
こうやって人から物を奪うことを失敗すれば、死ぬことは凜音も杏里も承知だった。
男が自分よりも強いことに杏里も理解したのか、その場から逃げ出してしまった。
……凜音を残して。
「お嬢ちゃん、おいてかれちゃったよ?」
男は優しそうな笑顔を見せたが凜音はどうでもいいというふうに、口を開いた。
「……別に。早く殺せば?」
こんなことを始めたときから、死ぬ覚悟など凜音には出来ていた。
いや、むしろ凜は早く死にたがっていた。この世界から解放されたいと願っていた。
「えー!?殺すわけないじゃん」
「じゃぁ、売るの?」
"人買いに売られたら自分の値段はいくらなのだろう"凜音はそんなことを考えていた。
「売らないって(笑)」
男は鞄からチーズとパンを取り出して、凜音に差し出した
「腹へったろ?」
「…………変なやつ…」
凜音はパンを受け取り、無言で食べはじめた。