彼は魔法使い【短】





バンビは少し外れた位置にある美容室。


なんと店員はこの浅野さんだけ。


あたし以外が居る所を見たことがなくて、ちゃんと経営が成り立っているのかは謎。


でも、浅野さんはすごく上手で優しくて格好良い。


一度、なんで此処で働いてるんですか?って聞いたことがある。

せっかく上手なんだからもっと町のお店で働けばいいのに、って。

そしたら浅野さんは少し困ったように、ここは今は亡い父の店だからって答えた。


思い出一杯のこの店で働いていきたい。って。



浅野さんってそんな人。



こうゆうのも大人の魅力なんだろうか?




そしてあたしは失恋したときは此処にきて、髪をいじってもらいながら愚痴を聞いてもらうのが恒例となっていた。



もちろん今日も例外ではない。




美容院独特の椅子に座ると首にタオルを回される。



ふと前の鏡に目をやれば、後ろに立つ浅野さんと目があった。


整った顔に見つめられ思わずドキッとしてしまう。



『…今度はどうしたんですか?僕でよければ聞きますよ。』



浅野さんは毎回こうやって、あたしから話を聞き出してくれる。



話すとスッキリするってことを解ってくれている。





あたしは鏡の中の浅野さんにポツポツと今回の恋を話し始めた。






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