■僕と彼女の短編小説■ 『赤信号』
■■■
数歩先を歩く、彼女の背中を見ながらの朱い家路。
彼女は踊るようにくるくると回る。
スカートが広がって、閉じる。
「どうして、校則は存在するのかしら」
「さあ?」
不思議と、右手が襟元に伸びる。
「約束事を守る、練習ですかね」
適当に答えると、彼女はうっとりと顔を歪めた。
「規則は、破りたくなるものでしょう?」
ペロリ。
舌舐め擦り。
僕は訳も分からず頷く。
「だから、敢えて規則を設けるの」
サラリ。
黒髪が揺れる。
僕は彼女に追い付いて、首を傾げる。
よく分からないという意思表示。
彼女は喉の奥で笑うと、
「本当に破ってはいけない決まり事から、目を逸らせる為に」
そう言って片目を閉じた。
目の前には横断歩道。
信号は、赤。
危険だから入ってはいけないという合図。
僕は止まり、彼女は歩く。
「どうしたの?ここ、車は中々通らないわよ」
知っているでしょう?
彼女はおいでと手招きをする。
ここで規則を破っても、誰も見てはいないから。
僕は一歩踏み出そうとして、彼女は突き放す一言を忘れない。
「ところであなた。人を殺してはいけないって、誰かに言われたことはある?」
それは言うまでもなく当たり前のこと。
けれど誰も口にはしない。
彼女の言葉が思い出されて、僕はゆっくり襟元から右手を離した。
赤信号。
横断歩道の始まりで。
数歩先を歩く、彼女の背中を見ながらの朱い家路。
彼女は踊るようにくるくると回る。
スカートが広がって、閉じる。
「どうして、校則は存在するのかしら」
「さあ?」
不思議と、右手が襟元に伸びる。
「約束事を守る、練習ですかね」
適当に答えると、彼女はうっとりと顔を歪めた。
「規則は、破りたくなるものでしょう?」
ペロリ。
舌舐め擦り。
僕は訳も分からず頷く。
「だから、敢えて規則を設けるの」
サラリ。
黒髪が揺れる。
僕は彼女に追い付いて、首を傾げる。
よく分からないという意思表示。
彼女は喉の奥で笑うと、
「本当に破ってはいけない決まり事から、目を逸らせる為に」
そう言って片目を閉じた。
目の前には横断歩道。
信号は、赤。
危険だから入ってはいけないという合図。
僕は止まり、彼女は歩く。
「どうしたの?ここ、車は中々通らないわよ」
知っているでしょう?
彼女はおいでと手招きをする。
ここで規則を破っても、誰も見てはいないから。
僕は一歩踏み出そうとして、彼女は突き放す一言を忘れない。
「ところであなた。人を殺してはいけないって、誰かに言われたことはある?」
それは言うまでもなく当たり前のこと。
けれど誰も口にはしない。
彼女の言葉が思い出されて、僕はゆっくり襟元から右手を離した。
赤信号。
横断歩道の始まりで。