季節のあいだに
「んでね?…」

急に真面目な顔になった奈津。

「俺…」

その真面目な表情に、あたしはまともに奈津の顔が見られなかったの。

吸い込まれそうな奈津の瞳。


「俺たぶん、亜希のこと、好き…だよ?」


「…ふぇ?」

あたし、張り詰めてた糸がぷっつり切れたの。

今、好きって言った…?

涙が溢れた。
あたし、奈津の前で泣いてばかり。

奈津の温かさに、安心が溢れるんだ。

「なあに泣いてんの〜?」

そう言って奈津はあたしを優しく抱きしめたの。

「だってぇ…」

奈津の胸の中で、あたしは何も言葉に出来なかった。

こんなに、こんなにたくさん、奈津を思ってても、何も言えなかったの。
< 22 / 24 >

この作品をシェア

pagetop