君はここにいた。


 見覚えのある後ろ姿。


 細長い身体に、美しい茶色の髪。
 綺麗に整った横顔。



 鼓動が走る。


「―― 槝木」


 思わず名前を呼んでいた。


 なんで…?


 呼んでしまってから、はっと気づく。急に恥ずかしさが込み上げてきた。
 きっといま―― 顔が赤い。


「…変な顔」


 慌てる俺を見て、槝木が吹き出した。
 めくっていた本を閉じて棚に戻すと、こっちに近づいてくる。


「顔真っ赤だぜ、浅葱」

「え?」


 いま俺の名前。
 もしかして俺のこと覚えてるのか。


 ドクン。


 また鼓動が走る。




「…覚えてるよ」




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