君はここにいた。


「俺、待ってたんだぜ。お前が話しかけてくるの」


 槝木はそう言って、小さく笑って見せる。


 だけど俺は、嬉しいのと恥ずかしいのとで、槝木の顔をまともに見れない。
 なんで俺、こんな嬉しがってるんだろう。


「だったら、槝木から話しかけてくればいいだろ」

「それもそうか」


 今度は声をあげて槝木が笑う。
 それから、近くにあったソファーに腰を下ろした。




 そういえば…


「―― 槝木は、医学に興味あるの?」


 周りを見渡してふと気付く。ここは医学書が置いてある棚だ。
 ここで本を読んでいたってことは、槝木は医者でも目指しているのだろうか。



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