君はここにいた。
「当たらずとも遠からず、ってとこだな」
槝木が意味深な笑みを浮かべて、あいまいな返答をする。
「医者になる気はない。かといって、医学に興味がないわけじゃない」
そう言って、槝木は小さく息を吐き出した。
その態度が、それ以上は聞くなと言っているような気がして、俺は、そのことについてはそれ以上聞かなかった。
すると今度は、槝木が俺を見上げて聞いてきた。
「―― 浅葱は、ここに何しに来たんだ?」
「俺? 俺は…」
そうだった。
俺は、大倉の勉強を手伝いしに来てたんだ。もっともやりたくてやるわけじゃないのだけど。
この何分かで、危うく忘れかけていた。