君はここにいた。


「大倉の勉強の手伝いに。それで、いま何か読む本を探してたんだ」

「アツ? あいつ来てるのか?」


 アツとは大倉のことだ。
 敦士(アツシ)だからアツ。ただそれだけ。


「うん。大倉、期末試験で赤点とったから、課題が山ほどあるらしい」

「あいつ、馬鹿だからな」


 槝木がおかしそうに声をあげて笑った。


 あの人気者の槝木が、いつも何十人って人に囲まれている槝木が、俺の隣で、しかも1対1で、こうやって笑っているなんて…
 なんて不思議な光景だろう。

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