君はここにいた。
うわぁ。
思わず息を呑んでしまった。
少年とも少女ともとれる中性的な美しい顔立ち。灰色の透き通った瞳が僕をまっすぐ見上げている。
雨のせいでそう見えるだけなのか、その瞳は微かに潤んでいて、頬を涙が伝っているようにも見えた。
「―― あ、雨すごいネ?」
目が合ったからには何か話さなければ…と口に出たのはその一言だった。しかも、あまりの緊張で若干声が裏返ってしまった。
彼……いや彼女かもしれないが――。目の前の相手は、軽蔑するような眼差しで僕を睨みつけてきた。
「か、か、風邪…ひくよ?」
僕は下手な―― でも精一杯の笑顔を見せて、持っていた傘を差し出した。