君はここにいた。
はぁ。
少したって彼が小さく息を吐いた。
「盗まれる方が悪いんだ。盗まれたくないほど大事なものなら、肌身離さず持っとけっての」
たしかに。
僕は、不覚にも一瞬納得してしまった。
だが、すぐにかぶりを振って見せる。
「だからって、盗みはよくないよ!」
泥棒と同じじゃないか。
「べつに商品じゃねぇんだし。ただの忘れ物だろ」
「そうだけど。それでもこれは人の物だ。人の物を盗むのはよくない。常識だろ」
僕なりの精一杯の強気の声を出してみる。
しかし、彼は全く怯むことはなかった。
「人の物…ねぇ。忘れたってことは、そこまで大事なモノじゃなかったんだろ。でなきゃ、忘れたりしねーよ」
「だけど…」
「…しつこいな」
今度は彼が僕を睨みつけてくる。やっぱり迫力が違う。全身に鳥肌が立つのがわかった。