君はここにいた。
それでも、僕も負けていなかった。唇を軽く噛んで怖いのを必死にこらえた。微かに潤んだ瞳で彼を真っ直ぐ見上げる。
「…何なんだよ、アンタ」
彼が大きく溜め息をつく。
「わかったよ。―― 借りるんなら問題ないか?」
「え?」
借りる?
僕は驚いて彼を見上げた。
彼が鞄からノートを取り出す。
さっきグランドに落ちた所為で、軽く泥がついてしまっている。
彼は簡単にその泥を払い除けると、そのノートの最後のページを器用に破った。
それから、ペンを取り出しノートに何かを書き始めた。