君はここにいた。
それでも――。
それでも、僕はこの彼が苦手だった。
人気者の彼が羨ましいとか、そんなんじゃない。
ただ、いつでも笑ってる彼を見ると、何故か胸の奥が苦しくなるのだ。
「お、おはよう。…今日、早いんだね」
あまり関わりたくはないけど。
挨拶の出来ない人間にだけはなるな、と去年死んだお祖父ちゃんがよく言っていた。
「なんか、目が覚めちゃってさー。久々にハルと夜遊びしなかったからかなぁ…」
「よ、夜遊び…?」
なんだそれは。
まさかそんな危なっかしい言葉が出てくるとは思わなかった。僕はいま心底驚いている。
「あ、こっちの話」
アサギはそう笑ってごまかすと、何の遠慮もなく僕の隣の席に腰をかけた。
笑顔のまま僕の顔を覗きこんでくる。