君はここにいた。
「宇佐見は、俺のこと友達だと思ってないのか?」
アサギの真面目な顔が覗き込んでくる。
僕はすぐに顔を背けた。
「友達は、そう簡単になれるものじゃないよ」
「…そっかぁ」
アサギが一瞬、寂しそうな顔をして見せる。
僕は続けた。
「もし、僕が危険な目にあってたら、アサギは迷わず僕を助けにきてくれる?」
「え…?」
アサギと目が合う。
今度は真剣な眼差しで彼の目を見つめた。
彼の目は少し泳いでいた。
「友達なんて…、あんなの形だけだよ」
何も言わないアサギにそう言い残し、僕はゆっくり立ち上がった。
これ以上、彼と二人きりでいることはできない。
英語の教科書を片手に、ドアの取っ手に触れた。