君はここにいた。


 パシッ



 豪快に風船が割れるような音が響いた。
 恐る恐る目を開けて見ると、どうやら、女の子が彼の頬を手で叩いたようだった。


「バカバカバカぁーーー!」


 泣きながら甘えるような声で女の子は叫び、そのまま走り去ってしまった。
 1人取り残された彼は、叩かれた頬をさすって大きく溜め息をついている。それから、振り返って僕のいる方を向いた。


 目が合う。



「アンタ、昨日の。…盗み見とか、いい趣味してんな」


 どうやら、僕のこと覚えていてくれたらしい。

 …って、そんなこと思ってる場合じゃない。 
 僕はあわてて首を振って見せた。


「いや、えっと…見るつもりじゃなかったんだけど」

「まぁ、べつにいいよ」


 そう言う彼の面は、あきらか不機嫌だった。


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