君はここにいた。
「…彼女なんかじゃない」
「え?」
でも、さっきあの子と…
「あれはただの男好き。本気で俺を好いてるわけじゃない。一種の遊びみたいなもんだろ」
彼はそう言って、大きく溜め息をついた。
「遊び…?」
さっきの女の子の表情を思い浮かべる。
そうは見えなかったけどなぁ。
「…その本のピンク色の表紙には、可愛らしくて、そんでもって柔らかい字で“恋人”って書いてありました」
突然、紙芝居でも読んでいるかのように彼が語りだした。
僕は、とりあえず黙って話を聞く事にする。
「きっと甘く温かなラブストーリーが描かれているのでしょう」