君はここにいた。
ピロロロ~ン♪
再び、携帯が音を鳴らした。
芝生の上に放っといた携帯を見る。電話だ。俺は、慌てて電話に出た。
「なんよ? ケン坊」
『お前、今何時だと思ってんだよ?』
受話器の向こうで、ケンの大声が響く。普段だって大声なのに、いつもよりさらに増して迫力がある。
「え? 何時って…何時だ?」
『もう8時半過ぎ! 入学式始まんのあと5分だぜ』
「えぇ?!」
俺は、右腕にしていた腕時計を見た。
8時40分。
30分までには教室に着いてろ、とこの間の説明会で何度も聞かされた。
完全に遅刻だ。