君はここにいた。


「ほら、早くしろよ」


 彼が、差し出していた手で俺の腕を掴む。


「ちょ、痛っ」


 彼の長い爪が腕の肉に食い込んでいる。
 俺は苦痛の声を上げたが、彼はお構いなしだった。勢いよく、俺を引っ張り上げる。


「あぁ~あ…ドロドロじゃん。そんなんじゃ、入学式出れねぇな」

「あ、そうだ。やばっ!」


 もうすぐ入学式が始まってしまう。
 急がないと。


 俺は慌てて、水路に落ちた自転車を拾い上げた。
 泥まみれだが、今は気にしてる時間はない。そのまま、自転車を押して走り出そうとした。


「ちょっと、待てよ!」


 彼に腕を掴まれた。



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