桃太郎【Gulen】


「バカ!それだけの大層な名前を名乗ることを許されている立場だというコトを理解しろ!」


「ハハハ・・・私の名前を聞いただけで、斉天大聖様の名前が出てくる辺り、教養もおありのようで。どうぞ、気を使わずに、私のことは気軽に『猿』とでも、お呼びください。」


 できるか!!そんなコト!!


「輝夜姫、これはどういうことだ?ことと次第によっては、唐と一戦を交えることにもなり兼ねんぞ。」


 唐相手に、こんな小国が勝てると思っているのか?


「勘違いするな。悟空はわらわの大事な客人よ。猿よ、このようなたわけ者の馴れ合いに付き合うことはないぞ。おぬしの身に何かあったら・・・」


「大丈夫です。輝夜姫。それに、このところずっと屋敷の中で、身体もなまっております。ここいらで、一つ、倭の国の鬼を相手にするのも良いかと・・・。」


 悟空の目が光ったのが、分かった。


 細い目の奥には、実に恐ろしいものを秘めているのが、分かる。


 手持ちの獲物が剣ではなく、如意棒であるのも、己の凶暴さゆえだろう。


 刃物など持たせたら、こやつは見るもの全てをきりつけている夜叉になりかねん。


 自制心の制御を、己が獲物を如意棒にすることによって、最低限の殺めで抑えているのだ。


 恐ろしい男を飼っているものだ・・・輝夜姫・・・。


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