桃太郎【Gulen】


「一人は、どこにでもいる、しがない漁師。だが、もう一人は高貴な血を引く、王家の男だった。」


「それは、どういうこと・・・」


「しっ、サルは黙ってろ。」


 イヌも黙ってろ!


「王家の男のほうは、王位などに興味はなかったのだがな・・・他になるものもおらずにな、仕方なしに、王位につくこととなった。」


「・・・・もしかして・・・。」


 さすがに、その話をされれば察しもつく。


「頭は切れるようじゃな・・・そうだ、その男が、お前の父、スサノオウだ。」


 やはり・・・。


「時代の流れ、お互いの立場。男としての信念。誰がアヤツを責められよう・・・。」


 そこまで聞けば、話は分かる。


 ただ、どうしてこの老人がその話を知っているのか・・・ただ、それが気になる。


「もしや、鬼の正体とは・・・『ヤマタノオロチ』のことでしょうか?」


「・・・さよう。」


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