桃太郎【Gulen】
「ヤマタノオロチって、あの化け物かよ・・・。でも、それはスサノオウが退治したはずじゃ。」
金太郎が、驚くのも無理はない。
国のものは、その名を聞くだけで恐れをなす。
災いを呼び起こし、あわや内部からの国の崩壊をもくろんだ男。
それが、ヤマタノオロチの一般的見解だ。
しかし、父は言う。
ヤマタノオロチほど、優れた剣士はおらず、有能な釣り人はおらず・・・そして、ヤマタノオロチほど、偉大な男はいなかった・・・と。
「全ては結果よ・・・。」
浦島仙人は海を眺めながらつぶやく。
「過程に意味などない。人は結論だけを見て生きるのじゃよ・・・。」
言うと、仙人は釣り糸をクイクイと動かした。
瞬間、竿が下に動く。
・・・まさか、かかったのか?
「・・・逃げたか・・・。」
しかし、逃げられたらしい。
「今の話を聞くと、ヤマタノオロチという男。元々人間でありながら、鬼に成り下がったというコトでしょうか?」
悟空が仙人に向かって質問をする。
「そんなコト、所詮一介の釣り人である、ワシが知ることではなかろう。」
仙人とまで呼ばれる男が、そんなコトを知らないはずはないのだが、それを一介の王子にしか過ぎない自分に追求できるはずもなかった。