桃太郎【Gulen】


「お初に、お目にかかります。ここで浦島様の付き人をしている『乙姫』と申すものです。気軽に『鶴』とでもお呼びください。」


 乙姫は、仙人がいる岬のうえまで昇ってくると、深々と一礼をした。


 その間に髪は乾いたのか、ぺたりとくっついていた髪はサラサラと流れている。


 水に濡れたままの着物も失礼と判断したが、それ以上に客を待たせるのも失礼という配慮からか、白い着物の上に、浜辺の岩にでもかけていたのか、羽衣をパサリとかけていた。


 それが余計に色気を誘いうというコトは、悟空と金太郎の顔を見ていれば言わずとも分かる。


「鶴など、ご謙遜を・・・あなた様なら、雉と呼んでも構わない。」


 ・・・・・・・悟空、比べるところが分からん。


 一応、雉は王家の鳥だが・・・。


「まぁ、お口がお上手で。」


 乙姫は、口を手に当て、ウフフと笑う。


 え?上手だったの?


 今のが?


女の感覚はよく分からんな・・・。


「雉・・・雉か・・・美味そうだな。」


 黙れ、イヌ。


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