桃太郎【Gulen】


「主様。でしたら、私を女子とは思わずに、一羽の雉を連れ歩いていると思いください。」


 雉と思えと?


「三人の武士に1羽の雉・・・鬼退治には、もってこいの布陣だと思いますわ。」


 いや、三人の武士と1羽の雉というよりは・・・


「王子に、犬、猿、雉・・・と言ったところですね。」


 悟空がフフフと笑う。


 まったくだ。


「まるで、御伽童子だな。」


 ため息も出るというもの。


「童に聞かすには、ちょうど言い、物語だろうさ。」


 金太郎が、カッカカカと笑い飛ばす。


 仕方ない。


 狗を連れ、申を連れていていれば、この際、雉が増えたところで、大した違いはない。


 相手が八岐大蛇というコトなれば、兵をこれ以上増やす必要もない。


 神剣があれば、十分だ。


「分かった、お供させよう。仙人様、それでは乙姫殿を遠慮なくお借りいたします。」


 まさか、女を連れて鬼退治に向かうことになろうとはな・・・。


 このような話、どのような手柄を立てたとしても、他人には話せんな。


「ふむ、道中気をつけなされ。孫にヨロシクな。」


 はっ。


 桃太郎は、浦島太郎に向けて深く一礼をすると、海辺に向かう。


 御伽童子桃太郎、狗、申、雉のお供を連れて、いざ向かうは、出雲の国の鬼が島。


 立ち向かうは鬼・・・八岐大蛇。


 いざ参る!


 
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