桃太郎【Gulen】
出雲
出雲の国は枯れていた。
道中に半月の時を要した。
田植えの時期が始まり、種まきの季節となった。
それだというのに、出雲の国に活気というものが見当たらなかった。
「わざわざ、大和の国よりお越しいただいたというのに、大したおもてなしも出来ず、申し訳ございません。」
出雲王は、お年を召した老人だった。
スサノオウに比べると、ふた周りほど上だろうか。
浦島仙人と比べると・・・いや、仙人と人間は比べるものではないな。
「かまいはしない。俺たちは、父の命と貴殿の願いで、ここに来たのだからな。」
出雲の王宮は、どちらかといえば自分たちの大和の国と近いものを感じた。
板張りの床は、はやり落ち着く。
出雲王の回りに従者が5人ほど。
みな、活気がない。
「飢饉ですか?」
悟空が聞いてきた。
「さよう。去年はほどほどに作物が取れず、この冬を越せぬ者も、一人や二人ではありませんでした。」
・・・・・・・飢饉か。