かえりみち
幸一や由紀子の顔、百合や春樹の顔を順番に思い出す。
一緒に過ごした、太陽のような日々。
自分がどれだけ彼らを思っているのかに気づいて、卓也は切なくなった。
でも。
いや、だからこそ。
僕はあの人たちといるべきじゃなかった。
どんなに本性を隠していても、だめ。
僕はあの人たちを傷つける。
暗く湿ったこの屋敷。
でも。
ここにいれば、大切な人を誰も傷つけずに済む。
ここにいると、最初からいなかったことになれるような気がする。
最初から、それが僕の願いだった。
もう、考えるの疲れた。
考えるの、つかれた・・・。
卓也は静かに目を閉じた。