かえりみち

かかっていたラジオが、先ほど関東地方に大雨洪水注意報が発令されたと知らせている。

すごくすごく嫌な予感と、幸一は必死に戦っていた。

降り続く雨のせいで、川の水位はかなり上がっている。
もし自分の不安が的中したとしたら。

もう二度と、あの子を広大な闇の中から引き上げることはできない。
そして、自分も。

お願いします、神様。
もしあの子とまた会えるのなら、
もう一生チェロが弾けなくなってもかまいません。
死んだってかまいません。
あの子を守ってください。
あの子にもう一度、会わせてください。

祈りながら、幸一はサイドブレーキを解除した。

最後の望みに、かける。
もう他に、あの子が行きそうな場所は思い当たらない。



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