かえりみち

メガネの奥の幸一の目が、一瞬泳いだ。

「由紀子のこと?まあ、波はあるけどなんとかやってるよ」

「いや、由紀子さんもだけど。君の息子・・・なんていったっけね、歩くんだっけ?彼は今どうしてるの?」

きょとんとする幸一。

「あれ。聞いてなかったのか」

「聞いてないよ。あれからどうなったのか、気にはなっていたけど」

幸一が、寂しそうに微笑んだ。


「歩はね・・・死んだんだ」


安川の目が驚きで見開く。

「なんで・・・?!だって、あのときは命には別条なかったじゃないか」

「うん。あのときは大丈夫だったんだけどね。そのあと、川に落ちたんだ。自分で」


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