かえりみち
無性に正卓に会いたかった。
そして、聞きたかった、自分がこの先どうしたらいいのか。
自分の表も裏も、全て知っている唯一の人物に。
病院の外に飛び出した卓也は、タクシープールから少し離れたところに、黒塗りの個人タクシーがあるのをすぐに見つけた。
正卓が出かけるときに、いつも使うタクシーなのですぐに分かった。
こんなに早く見つけられたことに、少し驚きつつ卓也がタクシーに近づく。
ドアがひとりでに開いた。
後部座席に正卓がいる。
「乗れ」
卓也は素直に従った。
正卓はまっすぐ前を向いたまま、卓也に目をあわそうとしない。
「出せ」
タクシーが動き出した。