かえりみち
「・・・どこに行くの」
長い沈黙の後に、卓也が尋ねた。
「今に分かるさ」
車窓から見える街並みは、方向音痴の卓也にも、正卓の家がある街に向かっているのではなさそうだということを教えてくれていた。
そう思っているうちに、正卓が口を開いた。
「ここで止めろ」
タクシーが止まった。
「出ろ」
タクシーが止まったのは、長い大きな橋の真ん中だった。
欄干に塗られている薄いグリーンのペンキが、ところどころはげて錆びになっている。
「・・・」
卓也は、ゆっくりと正卓を振り返った。
昔ここに、来たことがある。
「どういう場所だか、分かるよな」
正卓が、じっと卓也を見つめた。
・・・分かるよ。
ここは、
ここは、僕が死んだ場所だ。