かえりみち
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夕暮れ時の駅の構内は、帰路を急ぐ人々でごった返している。
どの人も、次に乗る電車のことしか考えていないようにみえる。
その中を、一人ゆっくり歩く幸一。

足早に通り過ぎていく、膨大な数の顔、顔、顔。
今日は何百人、いや何千人とすれ違ったのだろう。
それなのに、本当に会いたい人には、
あの時から一度も会えていない。

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