かえりみち
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夜、高伊音楽院。
今夜もまた、卓也のチェロが講堂に響いている。

分かってる。
体はもう、限界を超えているって。
だけど、弾いていない時間は絶えず不安にさいなまれて、押しつぶされそうになる。
その不安を打ち消すために、弾きつづけるしかない。


弾き続けろ。
弾き続けろ。
弾き続けろ・・・。






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