かえりみち


「人が生まれることに、ひとつひとつ意味があるのだとしたら」
幸一は、どこかで読んだ言葉を、繰り返した。

「君はそれを果たすために、行ってあげないとな」

幸一が、由紀子の手を借りて立ち上がった。

「だけど、一つだけ覚えていてほしいんだ」

幸一は、卓也の背中にゆっくりと語りかける。

「人の生まれる意味は、一つしかないわけじゃない。

生まれたときに、決まってしまうものでもない。

君の優しさ、ひたむきさ、君の笑顔。

そんな君を待っている人たちが必ずいるということを、

決して忘れないで」




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