かえりみち
思わず声が出た。
「・・・あゆ、む・・・?」
「・・・」
困惑している青年。
確かに、
歩はこんなに背が高くはない。
黒いジャケットなんて、歩は持っていない。
こんな大人びた声ではない。
そう、靴ひもも縦結びになっていない。
でも。
想像してみたことがある、歩はどんな大人になっていただろうと。
自分の想像した大人の歩が、今目の前に立っていたのだ。
幸一は、自分の内側の世界から現実世界に召還してしまったように見えるこの青年を、どうしたらいいのか分からなくなった。
しばしの沈黙の後、青年が笑顔になり、口を開いた。