かえりみち
華奢な体つきに、透き通るような白い素肌。
美しいはずなのに、どこか陰のある顔立ち。
ガスパルに翻弄されている卓也を一目見て、目の色を変えた。
「・・・」
心の動揺を抑えるように、胸に手を当てる。
「由紀子」
幸一。
その声に卓也が由紀子に気づき、立ち上がる。
「葛西卓也くんだよ」
由紀子と卓也は、少し離れた場所から、お互いを確かめるように一瞬見合った。
「・・・葛西卓也です」
「・・・」
無言で卓也の顔を見ている由紀子。
由紀子には刺激が強すぎたかな・・・。
あのことがあってから、もう14年。
今はもう、歩のことを泣かずに話せるようになったよね。
歩によく似たこの子のことも、話したら会ってみたい、って君は言った。
だから大丈夫かな、と思ったんだけど。
そのとき、由紀子が微笑んだ。
幸一の好きな、いつもの優しい笑顔だった。
「いらっしゃい。疲れたでしょう?さ、入って」
良かった・・・
幸一は、そっと胸をなでおろした。