かえりみち
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卓也が来て最初の食事に、由紀子はビーフシチューを選んでいた。
料理の得意な由紀子の十八番。
歩も好きだった料理だ。
卓也はこれを食べて、どんな顔をするだろう。
「いただきまーす」
幸一は、皿に盛られたビーフシチューを勢いよく食べ始める。
「・・・いただきます」
卓也も、シチューを一口、口に運んだ。
「・・・」
「・・・お口に合わなかった?」
卓也がスプーンを持つ手を止めてしまったので、由紀子が不安そうに尋ねた。
「いえ。おいしすぎて息が止まるかと思いました」
卓也が大真面目な顔で言うので、由紀子は思わず笑ってしまった。
「ちょっと!大げさね」
「ビーフシチューは、由紀子の得意料理だからね」
卓也は、噛みしめるように一口一口、ゆっくり味わっている。
そんな卓也を、つい見てしまう由紀子。
歩も食べるのがゆっくりだった。
好きなものほど、最後までとっておいて食べる子だった。
例えば食パンだったら、周りの耳を最初に食べて、真ん中の柔らかいところは一番最後。
「だって、すぐ終わっちゃったらもったいないでしょ」
そう言いながら。
「?」
ふいに顔を上げた卓也と、目が合ってしまう。
「あ・・・本当に、おいしい?」
卓也がにっこり笑った。
「えぇ。本当に、おいしいです」
「たくさん作ったから、いっぱい食べてね」
すぐ終わっちゃわないように、たくさん作ってあるから。
「本当に、何杯でもおかわりしてね」
卓也が答える前に、由紀子の目の前に空になった皿が差し出される。
「じゃ、お代わり!」
由紀子と卓也は、一瞬唖然とし、その後笑い出す。
「ちょっと!早すぎるわよ」
「そう?」
「島田さん、頬にシチューがついてますよ」
「あ、ほんと?どっち?こっち?」
幸一は手で頬をぬぐうと、ペロリと舐める。
「あなた!もう、子供みたい」
「だっておいしいんだもん。あ、なんか痒くなってきた!ティッシュティッシュ!」
笑いがこぼれる食卓。
卓也が来て最初の食事に、由紀子はビーフシチューを選んでいた。
料理の得意な由紀子の十八番。
歩も好きだった料理だ。
卓也はこれを食べて、どんな顔をするだろう。
「いただきまーす」
幸一は、皿に盛られたビーフシチューを勢いよく食べ始める。
「・・・いただきます」
卓也も、シチューを一口、口に運んだ。
「・・・」
「・・・お口に合わなかった?」
卓也がスプーンを持つ手を止めてしまったので、由紀子が不安そうに尋ねた。
「いえ。おいしすぎて息が止まるかと思いました」
卓也が大真面目な顔で言うので、由紀子は思わず笑ってしまった。
「ちょっと!大げさね」
「ビーフシチューは、由紀子の得意料理だからね」
卓也は、噛みしめるように一口一口、ゆっくり味わっている。
そんな卓也を、つい見てしまう由紀子。
歩も食べるのがゆっくりだった。
好きなものほど、最後までとっておいて食べる子だった。
例えば食パンだったら、周りの耳を最初に食べて、真ん中の柔らかいところは一番最後。
「だって、すぐ終わっちゃったらもったいないでしょ」
そう言いながら。
「?」
ふいに顔を上げた卓也と、目が合ってしまう。
「あ・・・本当に、おいしい?」
卓也がにっこり笑った。
「えぇ。本当に、おいしいです」
「たくさん作ったから、いっぱい食べてね」
すぐ終わっちゃわないように、たくさん作ってあるから。
「本当に、何杯でもおかわりしてね」
卓也が答える前に、由紀子の目の前に空になった皿が差し出される。
「じゃ、お代わり!」
由紀子と卓也は、一瞬唖然とし、その後笑い出す。
「ちょっと!早すぎるわよ」
「そう?」
「島田さん、頬にシチューがついてますよ」
「あ、ほんと?どっち?こっち?」
幸一は手で頬をぬぐうと、ペロリと舐める。
「あなた!もう、子供みたい」
「だっておいしいんだもん。あ、なんか痒くなってきた!ティッシュティッシュ!」
笑いがこぼれる食卓。