かえりみち

私の人生で一番最悪な日。
それは、お母さんが死んだ日。
ガンだった。
そのときわたしは、10歳。
まだおとぎ話の世界で生きていた。
私の涙がお母さんの頬に落ちたら、
私が声を失うまで泣き叫び続けたら、
お母さんは目を開けてくれるんじゃないかって、本気で思ってた。
でも、そうじゃなかった。
もうこんな思い、したくないって思って。
だから、看護師になろうと思ったんだ。

2番目に最悪な日はいつか知ってる?
看護学校に入ったばっかりのときに、お父さんも死んじゃったの。
朝、作業場で、いつものように笑顔で見送ってくれた。
それが最後。
さよならも、ありがとうも言えなかった。


で、3番目は。
タクが刺された、あの夜。

なんで、
なんでわたしの大切な人は、いつも死んじゃうの?

泣きたかった。
怖くて、膝はガクガク震えてた。
頭から血の気が引いて、軽い脳貧血。
手先もすごく冷たくて。

だけど、私は決めたの。

もうこれ以上、
大切な人を奪われて、たまるか。

あなたのことは・・・
絶対に、助ける!

って。




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