かえりみち
深夜の往来の絶えた道路を、卓也がさまよう。
ずぶ濡れのスニーカーは、卓也の足どりをますます重くしていた。
スーツケースのハンドルが、卓也の手に食い込んでうっ血していた。
昼間からずっと歩き通しで、体力は限界をとっくの昔に超えている。
それでも卓也は歩いていた。
どこに向かっているのか、自分でも良く分からない。
多分・・・島田家からも、百合からもできるだけ遠く離れたところに行きたいのだ。
由紀子の顔と、百合の顔がダブって見える。
二人とも・・・僕と出会っていなければ、もっと幸せに、穏やかに暮らせていたはずだ…。
-ね?
ぼくが思ったとおりでしょ?
14年前の自分に、そう言われているような気がした。