雨女がくれた恋の奇跡
「海へ行くの？」


「いいなぁ立花」


「先輩の俺も友人として、一緒に連れて行ってくれ」

「バカは連れて行かないわよ」


「なんだよその言い方！」

先輩が俺に聞いてきた。


「綾野はどうするんだよ？」


「俺ですか？」


「先輩や立花さんに応援されているから・・・」


「夏までに彼女でも作ろうかななんて」


「考えているんですけどね・・・」


俺がそう話している途中。

先輩は時計をみて、


「おぉ時間だ」


「また仕事だ〜綾野。立花。作業場に戻るか〜」


「高島に仕事を押し付けられると思うと嫌になるね」

「今度ビッと言ってやるから」


お昼ごはんを食べ終わって、3人で社員食堂を出た。


「私トイレに行くから先に行ってて」


立花さんが俺たちふたりから、離れて行っているあいだ作業場に向かう通路で、先輩が俺に話して来た。


「今年はひとり寂しく女のいない夏を過ごすことになるのかな〜」


「立花め俺を海に連れて行かないとは上司に逆らっているんだから」


「夏までに彼女ができるといいな綾野」


「頑張れよな」


「はい！」


そう張りきって、言ったのは言いけどどうなるか・・・


外の世界を楽しんだ私は水たまりの中に帰っていた。

「あぁ楽しかったぁ」


「今夜8時かぁ〜まぁお礼だから、ふつうに行けばいいよね」


「恋愛じゃないし」と軽く考えていたけど


本当はすごく彼のことを異性として意識していた。


水たまりの中から曇った。

空を見つめて、目を閉じて、心で空に願いを込めた。

「この一ヶ月だけはけして私がいる、この町に太陽の光りが射すことはないようにした」
< 30 / 76 >
表紙・目次

この作品をシェア

pagetop