雨女がくれた恋の奇跡
時間は夜の7半に仕事が終わって、


佐藤工場長が俺の顔を見て、


「お疲れ様」と言った。


その言葉に俺は返した。


「工場長お疲れ様です」


「お先に失礼します」


そう言って、俺は会社を出て、


時間を気にしながら、携帯電話を拾ってくれた。彼女にお礼がしたくて、


待ち合わせ場所へと電車に乗って向かった。


電車の窓から見える夜景を見つめていたら、


走る電車の窓に滴がいくつもこぼれ落ちて来るのに気ずいて、


俺は雨が降って来たことに気ずいた。


丁度。同じ時間に私も待ち合わせ場所へと歩いていた。


「あぁ雨だぁ」


歩いていた。私は立ち止まって、傘を開いて、


雨が降る中。


私は待ち合わせした横断歩道の前に立っていた。


私が立っていた。横断歩道の向かい側で約束通りに彼は来てくれた。


私の顔を見て、ふつうに


「待たせたね」と笑顔で言いながら、


私の前に歩いて来た。


「いえいえそうでもないですよぉ」と私は言った。



新しく出来た和食のお店に私は誘われて、初対面の男の人とごはんを食べた。


「あの〜まだ名前を聞いてなかったけど名前は?」


「俺は綾野光と言います」

「君は?」


「私はアイリと言います」

携帯。拾ってくれて、助かったよ。


もし見つからなかったら、警察に届けるしかないかなって、考えていたけどね。

「昨日の夜にたまたま私と綾野さんが夜道で、すれ違う途中にぶつかって、


足元を見たら、携帯電話が落ちていたから、


もしかしたら、さっきの男の人のかなって、思ったから、


「これはなんとかして、届けなきゃいけないなぁ」と思って、


早朝に携帯電話を落とした。道で待っていたら、綾野さんと出会って、


今こうして、綾野さんと食事していることも偶然だよね。
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