*イチバンチカク*
――――――
『そのような事をおっしゃってはいけません』
ヴェネットのばかっ…
『そのような気持ちになれないというお気持ちはわかります。しかし、国のためにも婚約者をお決めにならないと……』
私だってわかっているのに…
バルコニーから広間へ戻った私は周りの人間に気付かれないよう涙を拭いた。
幼い頃からずっと私の見方だったヴェネット。
そんなに言葉を発する訳じゃないけど、いつも私の見方だった…
いつも…支えてくれた…
少し独りになりたくて、広間の隅の椅子に腰掛けているとひとりの男性が声を掛けてきた。
「一緒に踊っていただけますか?姫…」
彼は長い金髪を横に結んでいた。
美しく整った顔…そして優雅な身のこなしからどこかの貴族なのだろうと思った。
でも…