*イチバンチカク*


――――――


『そのような事をおっしゃってはいけません』



ヴェネットのばかっ…



『そのような気持ちになれないというお気持ちはわかります。しかし、国のためにも婚約者をお決めにならないと……』



私だってわかっているのに…



バルコニーから広間へ戻った私は周りの人間に気付かれないよう涙を拭いた。



幼い頃からずっと私の見方だったヴェネット。



そんなに言葉を発する訳じゃないけど、いつも私の見方だった…



いつも…支えてくれた…



少し独りになりたくて、広間の隅の椅子に腰掛けているとひとりの男性が声を掛けてきた。



「一緒に踊っていただけますか?姫…」



彼は長い金髪を横に結んでいた。



美しく整った顔…そして優雅な身のこなしからどこかの貴族なのだろうと思った。



でも…
< 13 / 46 >

この作品をシェア

pagetop