*イチバンチカク*
私の目に映ったのは、こっちを見つめるヴェネットの姿。
思わず私はヴェネットから目をそらしてしまった。
「姫?」
そんな私の態度を不思議に思ったのか、彼は私の顔を覗き込む。
「…なんでもありません」
私がそう言った時、ちょうど曲が終わった。
「あなたと踊れて幸せでした」
そう言うと、彼はひざまずき私の手の甲に口付けた。
思わず、私の目はヴェネットを探す。
どうしてだろう…ヴェネットに見られたくない…
しかし、もうヴェネットはどこにもいなかった。
この日の夜、私はなかなか眠れなかった。
「ヴェネット……」