*イチバンチカク*


そう思って黙っている私の耳に、聞き覚えのある声が聞こえた。



「姫、私です」



低く落ち着いた声。



「ヴェネット…」



私はその人物の名前を小さく呟くと、起き上がりそっとドアを開けた。



私の顔を見てペコリと頭を下げる人物。



彼は幼い頃から私を守る騎士で、そのスラリとした背丈から繰り出される剣技は国一番と言われている。



「ヴェネット…」



私がそっと笑いかけると、ヴェネットはどこか辛そうな表情を見せた。



私が失恋した事、知っているのね…



私はヴェネットに心配をかけたくなくて、少し明るい声でヴェネットに言った。
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