*イチバンチカク*
「婚約を解消して帰ってきちゃったわ。私にはやっぱりまだ結婚なんて早かったのね……」
ふふっと笑う私の顔を、ヴェネットはじっと見つめていた。
この目が昔から苦手…
寡黙なヴェネットの目は、まるで私の気持ちを見透かすようにじっと私を見つめている。
「姫…」
「あなたには、もっとずっと素敵な方がいらっしゃる」
ただそれだけなのに…
私の心はびっくりするくらい楽になって、気がついたら私はヴェネットに抱きついていた。
「ヴェネットッ…」
泣きじゃくる私の背中を…
彼の大きな手がずっとさすってくれていた…