さよならさえも言えなくて
第1章

真直ぐな想い

「17日、空いてる?」


駅の前まで差し掛かった所で、やっと口にした言葉。
平然と聞いたつもりだったが、声は震えていた。
付き合い始めてからもう半年という月日が経つというのに、あたしには余裕などこれっぽっちもなかった。


「17日?」


隣を歩いていた巧海が突然足を止める。


「もしかして……忘れてた?うちらの半年記念日じゃん!」


あたしは動揺を隠す様に笑顔で返す。


「いや、忘れてないよ」


巧海もそう言って笑顔で返してきた。


「あのさ、せっかく休日だし……どっか行かない?」


学校の門を出てからここまで、あたしの頭はこの事で一杯だった。
普段あたしは消極的な方で、自分から相手を誘うなどという事は殆どして来なかった。たとえそれが友達だったとしても。


「あ、うん。いいよ」


巧海の返事に、あたしは胸を撫で下ろした。

止まっていた足が動き出す。
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